海洋鉱物資源に関する基本情報
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海洋鉱物資源に関する基本情報
基本情報
(出典:JOGMEC ホームページ)
海底熱水鉱床
海底熱水鉱床は、海底の地下深部に浸透した海水がマグマ等の熱により熱せられ、地殻に含まれている有用元素を抽出しながら海底に噴出し、それが冷却される過程で、熱水中の銅、鉛、亜鉛、金、銀等の有用金属が沈殿したものである。日本の周辺海域では、島弧-海溝系に属する沖縄海域及び伊豆・小笠原海域において、水深700~2,000メートルの海底に多くの海底熱水鉱床の兆候が発見されており、比較的近海かつ浅海に賦存しているため開発に有利と期待されている。日本は2017年8~9月にかけて、水深1,600メートルの海底で掘削・集積した海底熱水鉱床の鉱石を水中ポンプ及び揚鉱管を用いて海水とともに連続的に洋上に揚げる世界初の「採鉱・揚鉱パイロット試験」を沖縄近海で実施し成功した。(出典:海洋エネルギー・鉱物資源計画(2019年2月15日))
コバルトリッチクラスト
コバルトリッチクラストは、海山斜面から山頂部にかけて、海底の岩盤を皮殻状に覆うマンガン酸化物で、特に電池の正極材等に用いられるコバルトの品位がマンガン団塊に比べ3倍程度高いことを始め、EV・電化を背景として需要の増大が見込まれる複数の重要なレアメタルを高品位で含む特徴がある。公海の海底及びその下に加えて日本の周辺海域にも存在することが判明しており、水深800~2,400メートル付近の海山平頂部といった海洋鉱物資源の中でも比較的水深の浅い箇所に分布している。2014年1月には、国際海底機構(ISA)と独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が南鳥島の南東沖での探査契約を締結した(2029年1月まで)。コバルトについては、次世代自動車(EV/PHV)の普及拡大に従って、リチウムイオン電池製造のために不可欠な鉱物資源として需要の増加が見込まれている一方、陸上鉱山における埋蔵量や偏在性の課題があるため、近年、産業界の関心が非常に高まっている。(出典:海洋エネルギー・鉱物資源計画(2019年2月15日))
マンガン団塊
マンガン団塊は、直径2~15センチメートルの球形ないし楕円形を呈し、銅、ニッケル、コバルト等の有用金属が含まれており、水深4,000~6,000メートルの大洋底の堆積物上に分布している。とくに、ハワイ沖(クラリオンクリッパートン)やインド洋の深海底に広く分布している。海洋鉱物資源の中で、最も古くから注目され、特に1970年代には欧米を中心とした国際コンソーシアムによって、世界に先駆けハワイ沖で探査及び大規模な採掘試験が行われました。2001年6月に国際海底機構(ISA)と日本の深海資源開発株式会社(DORD)がハワイ沖深海底での探査契約を締結した(2016年6月まで)。開発に係るルールが未整備なこと等から、2016年に、探査契約の期限が到来した日本も含め6契約については2021年6月までの5年間の契約延長が認められている。(出典:海洋エネルギー・鉱物資源計画(2019年2月15日))
レアアース泥
近年、新たに資源としての可能性を指摘されているレアアース泥は、水深 5,000~6,000メートルの大洋底の一部において、総レアアースを数千 ppm 以上含む堆積物であり、日本の南鳥島周辺の大陸棚でもその存在が確認されている。レアアースは、再生可能エネルギー等の日本の先端産業や環境対策技術に不可欠な元素であるが、その供給が特定国の政策に影響を受けやすいため、安定的な調達のための新たな供給源の確保が求められている。日本周辺海域のレアアース泥が資源として開発できる可能性が示されれば、安定供給に寄与し、上記産業分野の国際競争力の確保や新用途・産業分野の創出にも貢献すると考えられる。しかし、現状では、詳細な濃集帯の分布状況が不明であること、高粘度特性や5,000メートルを超える深海底からの採泥・揚泥技術が未確立であること、環境影響の及ぶ範囲等が不明であることなど、多くの課題がある。(出典:海洋エネルギー・鉱物資源計画(2019年2月15日))
関連法制度
海洋基本法
国連海洋法条約に基づき、海洋の問題について総合的かつ計画的に取り組むために2007年7月20日に施行された。①海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和、②海洋の安全確保、③科学的知見の充実、④海洋産業の健全な発展、⑤海洋の総合的管理、⑥国際協調を基本理念としており、海洋政策の推進体制として内閣に総合海洋政策本部を設置している。また、海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、海洋基本計画を定めることが規定されている。海洋鉱物資源については、第17条において、海洋環境の保全と海洋資源の持続的な開発及び利用に配慮しつつ、開発・利用を推進している。
鉱業法・鉱山保安法
鉱業法(1950年)は、鉱物資源を合理的に開発することによって、公共の福祉の増進に寄与するため、適用鉱物、事業着手義務、鉱業権の設定など鉱業に関する基本的制度を定めることを目的にしている。海底鉱物資源の探査および開発を想定した2011年の改正によって、海底鉱物資源に含まれる鉱物を特定鉱物として、国が資源の維持・管理を行いつつ、鉱区の設定および鉱業権を付与する制度、また、資源探査の主体については、その能力など新たな許可基準に基づく事前許可制度等を創設された。 鉱山保安法(1949年)は、汚染者負担原則に則り、鉱山労働者に対する危害を防止するとともに鉱害を防止し、鉱物資源の合理的開発を図ることを目的にしている。その施行規則は、作業安全対策、鉱業廃棄物等の処理等の環境対策について、事業者が行うべき措置を定めており、現行法では、鉱業権者に鉱害防止措置が義務づけられている。
深海底鉱業暫定措置法
深海底鉱業暫定措置法(1982年)は、国際社会の新たな海洋秩序への歩みや深海底鉱業を取り巻く国際環境の著しい変化に対応し、深海底鉱物資源の合理的な開発による公共の福祉の増進に寄与することをその趣旨として、深海底鉱業の事業活動の調整等に関する必要な暫定措置を規定している。鉱業法および鉱山保安法が、排他的経済水域および延長大陸棚までの適用範囲であるのに対して、深海底鉱業暫定措置法はその外側である深海底(公海の海底及びその下(鉱物資源の探査又は採鉱に関しいずれの国の管轄権の下にも置かれていない部分に限る。)のうち、深海底鉱物資源が存在し、又は存在する可能性がある区域であつて経済産業省令で定める区域の海底及びその下をいう。)に適用されるが、鉱山保安法の準用規定等も存在する。
排他的経済水域及び大陸棚に関する法律
排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(1996年)は、国連海洋法条約が規定している、沿岸国の主権的権利その他の権利の行使が及ぶ排他的経済水域と大陸棚について、その定義と適用される項目(天然資源の探査、開発、保存及び管理、人工島、施設及び構築物の設置、建設、運用及び利用、海洋環境の保護及び保全並びに海洋の科学的調査等)を定めている。
国の主な計画・政策
海洋基本計画
海洋基本計画は、海洋基本法16条に基づき、海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進のため5年ごとに見直される。これまで、2008年、2013年、2018年に策定されてきた。海洋鉱物資源については、鉱種ごとに施策が示されているが、現在の第3期海洋基本計画では、「海洋の産業利用の促進」の項目に、新たにレアアース泥に関する記述が追加された。
海洋エネルギー・鉱物資源開発計画
第1期海洋基本計画において、関係府省連携の下で、より計画的に海洋エネルギー・鉱物資源の開発を推進するために2009年に経済産業省によって策定された(その後、2013年、2019年改定)。具体的には、メタンハイドレート、石油・天然ガス、海洋鉱物資源関係(海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊及びレアアース泥)の鉱種ごとの目標とそこに至るまでの探査・開発の工程、そのために必要な技術開発等を定めており、また実際の技術開発や資源価格、あるいは国際情勢などを考慮し、計画のPDCAを適切に執行するものである。
国際法・国際機関
国連海洋法条約および第11部実施協定
国連海洋法条約は、海域区分に基づく新たな海洋秩序を実現すべく、1973年から行われた第3次国連海洋法会議のもと、11会期(+拡大11会期)にわたり審議された条約である。1982年に採択、1994年に発効し(2020年現在、168ヵ国加盟)、日本は1996年に加盟した。海洋鉱物資源については、排他的経済水域の海底において主権的権利のもと、沿岸国による開発が認められている。ただし、延長大陸棚については、沿岸国の有利な立場が認められつつも、国際海底機構を通じ金銭による支払いまたは現物の拠出の義務を負う。かかる活動を実施する際、海洋環境の保護および保全に関する義務を詳細化した国際海底機構による探査規則(開発規則は策定中)は、今後、少なからず参照基準として重要な役割を果たすものと考えられる。 第11部実施協定は、国連海洋法条約第11部(深海底の部)およびその関連附属書に明記された強制的技術移転の免除や事業体の役割など、実質上、先進国寄りに改訂された条約である。1994年採択、1996年に発効し(2020年現在、150ヵ国加盟)、日本は1996年に加盟した。深海底とは、「国の管轄権が及ぶ区域の境界の外の海底及びその下」であり、そこでは、国の主権または主権的権利の行使が禁止される。その目的は平和的利用とされ、深海底およびその資源は人類の共同の財産(Common Heritage of Mankind)と位置づけられる。
国際海底機構(ISA)
国連海洋法条約第156条に基づき、深海底の資源管理を行うために1994年に設立したのが国際海底機構(International Seabed Authority:ISA)である。国連海洋法条約の締約国が構成国であり、主要な機関として総会、理事会があり、事務局はジャマイカ・キングストンに設置されている。主な任務としては、国または事業体との探査鉱区の契約管理などだけでなく、ISA自体が採取された鉱物の輸送、製錬、販売を行うなど直接活動を行うこともできる。また、財政委員会、法律・技術委員会などが設置されており、たとえば法律・技術委員会では、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊の3鉱種のそれぞれの概要調査・探査規則を採択しており、現在は開発規則について議論している。 日本は、国際海底機構の最大の分担金拠出国であり、深海底鉱物資源開発に携わる国として、国際海底機構の設立以来、一貫して理事国に選出されている。また、現在、岡本信行氏(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構職員)が法律・技術委員会委員に(2016年7月選出。任期は2017年1月から2022年末まで。)、大沼寛氏(外務省職員)が財政委員会委員に(2016年7月選出。任期は2017年1月から2022年末まで。)選出されている。(出典:外務省Webサイト)